Tinker Edge Tは、AI処理をアクセラレートするTPUを搭載したシングルボードコンピュータです。
類似のボードとして、Google Coral Dev boardがあり、核となるモジュールは同じものを使っていますが、Tinker Edge TはASUS社が開発したボードです。
主なスペック
両者のスペック比較は次の通りです。
Coral Dev board | Tinker Edge T | ||
リリース元 | ASUS | ||
SOM | SoC | NXP iMX 8M | |
CPU | Quad-core ARM A53 @1.5GHz | ||
メモリ | Dual Channel LPDDR4 1Gbyte | ||
GPU | GC7000 Lite @1GHz | ||
アクセラレータ | Google Edge TPU | ||
MCU | Cortex-M4 | ||
ストレージ | eMMC | 8 Gbyte | |
micro SD | カードスロット(ばねあり) | カードスロット(ばねなし) | |
OS | Mendel Linux (インストール必要) | ||
電源 | コネクタ | USB-C | DCジャック (外径5.5mm、内径2.5mm) |
電圧 | 5V 3A | 12V~19V(45W) | |
インタフェース | 有線LAN | Gigabit Ethernet | |
ディスプレイ | HDMI 2.0a (CEC) | ||
MIPI DSI 39pin (4 lane) | MIPI DSI 22pin(4 lane) | ||
カメラ | MIPI CSI 24pin (4 lane) x1 | MIPI CSI 24pin (4 lane) x2 | |
audio | 3.5mm jack | なし | |
GPIO | 40pin | ||
黒 | カラー | ||
USB host | USB3.0 x1 | USB3.0 x2 | |
USB-OTG | Type-C | ||
シリアル通信 | USB2.0 Micro-B | (GPIOピンを使用) | |
Wifi | 802.11b/g/n/ac | ||
Bluetooth | 4.2 | ||
スピーカ | 4P 端子台 | なし | |
オンボード機能 | マイク | Digital PDM x2 | なし |
DIP SW | 4P | ||
リセットSW | SWあり | 接続用ピンヘッダー(2P)あり | |
LED | powerおよびシリアル通信(Tx,Rx) | powerおよび3つのプログラム可能なLED | |
同梱物 | 本体 | ||
Quick Start Guide | |||
バックプレート、ねじ (基板を取り付け基台として利用) |
カメラ重視のインタフェース
どちらも、核となるSoM(System-on-Module)は同じですが、周辺インタフェースに微妙な違いがあります。
Tinker Edge Tは、音声関連のインタフェースを省いており、カメラを接続するMIPI CSIインタフェースも2本あります。
また、USBホストは2口あります。MIPI CSIコネクタは0.5mmピッチのため、使用できるカメラモジュールは限られてしまいますが、USBが2口あるため、USBカメラを使うこともできます。
Tinker Edge Tは、音声処理よりも、カメラをつないだリアルタイム画像処理に向いた構成と考えられます。
コネクタの配置に工夫あり
また、よく見ると、コネクタ類はSoMと反対側の一辺に集中していることが分かります。色々な方向にコネクタが付いていると、ケーブルを接続したときにケーブルのコネクタの出っ張りの影響で、本来のボードサイズよりも一回り大きなスペースを必要としてしまうことになりますが、Tinker Edge Tは、コネクタの配置をきれいに揃えているので、本来のボードサイズから少し横に長くなった程度のスペースに収まります。
電源選択の柔軟性
多くのシングルボードコンピュータでは、電源をUSBタイプのコネクタで供給するようになっています。数多くの市販品から電源を選択できるというメリットがある反面、供給電圧は5Vのみという制約がありました。
初期のシングルボードコンピュータは、それほど電力を必要としなかったため、5Vでも500mA~1A程度流せれば稼動する(2.5W~5W程度の電力で動く)ものでしたが、年々CPUの性能は上がり、WifiやBluetoothなど周辺インタフェースも追加され、さらにはAI処理のためのアクセラレータが搭載されるようになると、2桁ワットの電力が必要になってきます。
5Vという低い電圧でより多くの電力を供給するには、より多くの電流を流さざるを得なくなります。市販品のACアダプターやケーブルでは、供給能力が不足気味となり、また、大電流を流せば、ケーブル内のわずかな抵抗値でも大きな電圧降下を生み、5Vという低い電圧の許容誤差を容易に下回ってしまい、動作不安定を招きかねません。
Tinker Edge Tでは、電源コネクタとしてUSBの代わりにDCジャックを使うことで、より高い電圧を供給できる電源アダプターが接続できるようになりました。
実はヒートシンクもオリジナル
SoMにはヒートシンクとファンが取り付けられています。一見すると、Coral Dev boardと同じに見えますが、細部の形状は異なる、ASUS社のオリジナルのヒートシンクです。
Coral Dev boardでは、このヒートシンクの横に技適マークが付いていましたが、Tinker Edge T搭載のSoMのヒートシンクには技適マークはありません。現状、外箱(紙箱)にのみ技適マークが記載されていますので、外箱は捨てないよう、大事に保管しておいてください。